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「海が大部分を占める世界、というのはどうでしょうか」
「それも漫画か何かで聞いたような設定だな。海賊が掃いて捨てるほどいるんだろ」
「ピンポンでーす。ちなみにスタート地点はランダムで、海賊の子に生まれることもあれば農家の長男になるかもしれません。生まれ方によっては、そもそも海賊になることも困難かもしれないですね。プレでは海賊になったルートに進んでもらいます」
ファンタジーの世界でも、望んだ役職や身分になれるとは限らない。死ぬ前の世界でも、望んだ生き方ができるのはごく少数だというのに。
しかし早速困ったことになった。
体験の場面は自分たちの船団が村を襲撃しているときなのだが、当然略奪することに村の住人は反抗してくるので――。
「――うぷ」
骸でできた山の横で仲間たちが宴をする中、俺は物陰でうずくまっていた。
吐き気。今も手に蘇る、肉を裂く感触。
「大丈夫ですか? 本命ジョブの海賊になれたとしても、略奪や殺人に耐えられる精神があればいいのですが。よくあるんですよ、ワールドギャップで病んでしまうの」
そのような言葉は初めて耳にしたが、大体の意味は想像がつく。確かに他人を傷つけたり踏みにじったりしなければいけない世界で、果たして俺は素知らぬ顔で生きていけるのだろうか。
「……ここも保留で」
世界観が大きく変わってしまえば、当然倫理観も価値観もまた激変する。前世の記憶といったものは、そのような状況では枷でしかないのかもしれない。
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