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目覚める――ことは出来なかった。
辺りは正真正銘の闇。当然だ、俺は目を開けていないんだから。
――いや、正しくは目を開け「られない」だ。
それどころか手足の自由もほとんどない。水中にもぐっているような奇妙な浮遊感が身体を満たす。そして自分の身体がとても小さい、ひょっとすると赤子未満の身体であるのかもしれない、ということだけは感覚で分かった。
苦しい。呼吸が上手くできない。
口を大きく開けて息を吸い込む。すると空気の代わりに大量の水が喉を通り肺になだれ込んだ。たまらずむせ、口から水を吐き出してしまう。
水面を目指してもがく。ある程度の自由が利く脚をがむしゃらに動かすが、何かにぶつかる感触はあるものの、存在するであろう水面には至らない。
一体ここはどこだ。俺はどこに転生したんだ。
その問いに答える者は誰もいない。助けを呼ぶ声も出せない。
一回目の人生でも経験したことのない暗闇の中、唯一はっきりしている意識だけが苦しみを感じ続けていた。
どこからか、優しい歌が聞こえた。
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