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カップルになった日
悠は花の手を引いて駐車場に歩いていた。
「え……どこか行くの? 映画……途中だったよね」
「二人きりになれる場所」
花の言葉に振り返ると悠は無邪気な顔で答えた。
「えっ! 待って! 二人きりになってどうするの? 」
嫌な予感がして悠の手を振り解いた。悠は顎に手を置いて視線を上に向け、考えながら答える。
「まずはキスをして、それから裸になっ……」
「しっ。しー」花が慌てて悠の口を手で塞ぐ。
「ちょっ……しー! ばかっ 」
「お前が聞いたんだろ」
悠は閉じられた口をモゴモゴとさせて、不思議そうな顔で聞き返す。
「私は純粋な疑問として聞いた訳で、あんたの脳内が邪なことで一杯になってたとは思わなかったから聞いたのよ。あんたは周りの目とか気にならないわけ? 」
花が悠から手を離し大きく溜息をつく。
「俺の目にはお前しか映らない。気になるのはお前のことだけ」
歯の浮くようなとはこう言うことだろう。アイドルがファンに振り撒くような甘い笑顔を花に見せる。何ともない会話が悠の口を通すと、甘くとろけそうな熱を持って返ってくる。
こんなにも暑いのは、夏の始まりを知らせる為なのだろうか。熱くて熱くて花は何度も汗を拭いながら、さらっとした悠の顔を見た。
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