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好奇心がいっぱい
悠は座り込んで動かない花を手招きする。
「花……早くお祝いのキスしてよ」
花は戸惑いつつも、カーペットから立ち上がり、ゆっくりと足を滑らすようにベッドに座る悠に近付く。
「……ずるい」
悠は少し腰を上げて缶ビールをベッドのヘッドボードに置く。ベットにまたゆったりと座り直して、両手を広げた。
「おいで……花」
女はやっぱり少しくらい強引にされたい。初めて体を重ねるときに、自分からグイグイなんていけない。ずるいなんて言葉で、溢れ返った欲求を丸め込んで、そっちに行く言い訳が欲しい。
悠の手の中へ引き寄せられるように近付いて、花は悠の足の上にまたがる。手は首筋に。悠は流れるように花の腰を抱き寄せる。
顔と顔は今にも触れてしまいそうなほど近くて、もうお互いしか目に映らない。
「花……教えてよキスの仕方」
「教えるなんてできないよ……」
動けば唇が触れてしまいそうな距離に、花は少し目を背けた。吐息のかかりそうな体温に焦らされて、胸が高鳴る。いつだって自分勝手なのに、こんな時は強引に唇は奪わない。
花の頬を触り、悠の指は耳から首元へ。
「じゃあ……俺にされたいこと……花が俺にして」
「……恥ずかしいよ」
悠の声が湿ったように、色っぽさを増す。
「二十歳のお祝いくれないの? 」
拗ねた顔をして笑う悠に、花は大きく息を吸い込む。やっぱりずるい。それでも触れる理由をくれたから、花は悠の顔に手を伸ばす。
少し顔を上げて悠は悪戯に小さく微笑む。花の指先が悠の唇に触れると、悠は唇を少し尖らせて、花に寄せる。あとは触れるのを待つだけ。悠は目を閉じて、口角をそっと上げた。花もゆっくりと目を閉じて唇を重ねた。
「……このあとは? 」
花と唇が触れたまま悠が尋ねる。
「……舌を絡ませるの……」
花が閉じていた目を開けて静かに答える。
「どうやって? 」
「口を開けて少しだけ舌を出して……」
悠は言われたまま口を開いて舌を出す。ぺろっと出された悠の舌は潤っていて、血色のいいピンク色をしていた。触れたい気持ちはたくさんある。だけど自分から、攻めることに抵抗もあった。
「……そうしたら? 」
「舌を……優しく絡めるの」
悠は花の首筋に手を添えて、目をそっと開ける。花の唇を舌で舐めて、唇をこじ開けていく。
「ん……」
「こう? 」
「ん……ん」
ねっとりと触れ合う舌に、頭が支配されて言葉が出てこなかった。少しだけ震える舌はビールの味がした。
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