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片手にはシャンパングラス。片手にはおしぼりを持ったままソファーに座ると、悠が体を密着させて花の太ももを持ち上げる。
「キャッ。えっ。何? ちょっと悠?! 」
「花が困ってそうだったから俺が全部舐めてあげようかなって。足の指先まで舐めてあげるよ」
悠はシャンパンを舐めとるように、花の太ももに舌を這わせる。
「ん……ん。や……パンツ見えちゃ……」
「シャンパン……桃の味かな……花の味と混じってる」
「もっもう! いいから! もー洗ってくる」
花は悠を押し退けてソファーから立ち上がり、お風呂場へと歩いていく。
「透け透け……」
お風呂場はラブホテルらしくガラス張りで全て丸見えだった。何一つ隠すものはない。
「こんなとこでスカート脱げないじゃん……もーどんな気持ちでこんな風呂に入るのよ。んーもう足だけ流せばいいか」
服を着たままシャワーを手に取り、手で温度を確かめながら足を流していく。シャンプーもボディソープもパッと見ただけだと分からなくて、小さな英語の文字を読み込んで、ボディソープを手に取った。
「はなーはなー」悠の呼ぶ声が徐々に近づいてくる。
「んー? 何か言った? 」
ガラス越しに悠が嬉しそうに歩いてくる。やっぱりスカートを脱がなくて良かったと安堵する。
「花ー良いものあったよ」
「いいもの? 何か嫌な予感しかしないんだけど……」
「はいっ。これ」
悠に手渡された服はOL風のコスプレ衣装だった。圧倒的に足りないブラウスの生地の量とボタンの数。パンツくらいしかないスカートの丈。子供服にも見えなくなかった。
「ほら。これに着替えて。スカート洗っておかないとでしょ? 」
「いっいやに決まってるでしょ? 何これっ。こんな短いスカート……丸見えになっちゃう」
「今日は? 」
「え? 」
悠は自分の顔を指でさして「今日は? 」と微笑みながら、もう一度花に尋ねる。
「誰の? 」
「……え」
「何の日だっけ? 」
悠の言わんとしていることを理解して、花は渡された服をきつく握りしめた。
「……悠の……二十歳の……お誕生日……です」
「はい。よくできました。向こうで待ってるね」
悠はピースサインをして、ご機嫌にお風呂場から去っていく。止めずにいたシャワーの音が鳴り続けて、怒りと共鳴していくようだった。
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