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ある程度の食事を済ませた後、悠が映画専用パンフレットを見つける。
「あれっ。ここって映画も観れるの? これ観たかったやつ。すごいなーラブホテル」
悠はさっとリモコンを手に持ち、テレビの電源スイッチを押す。
「あっ。ちょっ……ちょっと待って……」
花は慌てて悠の持つリモコンを取り上げようとすると、テレビからは卑猥な声が聞こえ始めた。
「え……」
悠はテレビに映し出されたエロビデオを凝視した。それは刹那、時が止まったように悠も花も声を出さなかった。
「ふーん」
悠は察した。リモコンでチャンネルをコロコロと替えて、確信を持ちニヤリと笑った。
「なるほど。こういうホテルは、こういうものが観れる訳だ。なーるほど」
悠はリモコンを持ちながら、ソファーの背もたれに寄りかかる。足を組み、もはや踏ん反り返っていた。
「これから俺はこいつらと同じことをすれば良いんだな。もう何も心配することはない」
水を得た魚のように、勇者が呪文を覚えたごとく、悠は性行為の教科書を見つけた。
「いや! いやいやいや。ちょっと待って! こ、こここんなのと同じことって……凄いことするかも知れないのよ。だめだめだめ」
「凄いことって? 」
「それは分からない。だけど、きっと、凄いことがこれから行われていくのよ。そう、か、過激な……」
「ふむ。そうは言うが、花! さっきからの会話によると、この女性は処女らしいぞ。興味があって、こういったビデオに出ることになったらしい。お、こちらの彼も童貞だと言っている。それなら過激なことなど起きないだろう」
「処女と童貞って……そんなわけ……」
悠の真剣な表情に花はそんな訳ないとは言い切れないと思った。きっと良いきっかけだと思って、こう言うビデオで初体験をする人だっているはず。私は偏見を持ちすぎていたのかも知れないと、花は口をつぐんだ。
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