酸いも甘いも、全部【完結】

デートと、合鍵と

広瀬さんが私のリュックを後部座席へ移してから

「はい、これ」

と言って、一万円札を出す。私は大きくかぶりを振って拒否した。
どうやらお弁当を作ってくれたお礼に、ということらしいけどそんなに材料費は掛かっていない。もらえない、というと

「手間もかかってるから。貰っといて」

というので、私は仕方がなくそれを貰った。

広瀬さんの今日の服は私と同じようにチノパンで色も黒で白いTシャツの上からネイビーのシャツを羽織っている。

いつもスーツでそれもそれでかっこいいけど私服も素敵だなぁなんて思っているうちに車が走り出す。

お弁当以外の準備は広瀬さんに頼んでいる。

「今日天気よくてよかった」
「そうですね」

車の窓ガラスを通して外を見る。今日は天気がいいから人出も多い。