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私はそれを受け取った。
「荷物、取ってきます」
「うん」
そう言って私は広瀬さんの車を降りると、高鳴る胸を抑えるように深呼吸しながら自分の部屋へ向かう。
…どうしよう。彼女になってしまった。
これは夢だろうか、そう思って自分の頬を何度もつねってみるが痛みを感じて夢じゃない!と嬉しくなる。
本当は飛び跳ねたいほど嬉しいのに本当に飛び跳ねるわけにもいかずに私は下着やパジャマや衣服を鞄に入れて車に戻った。
そのまま私を乗せて広瀬さんの自宅へ向かった。
…――
…
夜ご飯は、広瀬さんが出前を取ってくれて自宅でのんびりテレビを見ていた。
以前も来たことのある部屋なのに、付き合った、という事実があるだけで景色が違って見える。
バラエティー番組が流れるけど全く頭に入ってこない。
広いソファに肩を並べて座っているだけで緊張する。
と。
突然彼がテレビを消した。
広瀬さんを見ると、彼は私の目を見据えていて、思わずそれを逸らしてしまいそうになる。
「千晴」
「っ…あ、はい」
ビクッと肩を揺らしてしまう。慣れていない下の名前で呼ばれて恥ずかしくなる。
「付き合うってことは、千晴は俺のってことだろ?」
「…そりゃ、まぁ、はい…」
満足そうに口角を上げた広瀬さんの目が色っぽくてドキドキする。
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