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「顔真っ赤」
「それは広瀬さんのせいです。からかわないでください」
「からかってないし、それに、」
そう言って、すっと私の顔の輪郭をなぞるように指を這わせる彼に背筋が自然と伸びた。
そのままそれが顎を掬い、視線が絡む。
「ちゃんと名前で呼べよ。水希って」
「…はい、」
そういえば広瀬さんの下の名前は水希だ。最初育成担当の名前を聞いた時、女性だと思って安心したのにあったら男性で驚いた記憶がある。
ほら、と急かされて私は蚊の鳴くような声で「みずき、」と呟く。
言った瞬間、顔が近づき唇が重なる。
触れるだけのキスで心拍数が上昇する。ゴールデンウィーク中、広瀬さんと一緒に過ごせる。それだけで十分すぎるほどに幸せだ。
「心臓が…うるさくて、」
「へぇ、緊張してんだ」
「…そりゃ、そうですよ。だって…」
―好きな人だから
そういう前に私の背中に彼の手が回ってギュッと抱きしめられていた。
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