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勢いよく抱きしめられたから私の体は大きく揺れた。
ふわり、彼の香りが鼻孔をくすぐって、抱きしめられていることを実感する。
好きな人からこうやって抱きしめられるだけで、体温を共有するだけで安心して胸が熱くなる。
広瀬さんも同じだろうか。同じだといいな。
「久世とは?ただの同期?」
「そりゃ、はい。同期で友人ですよ」
「へぇ。向こうはそう思ってないけどな」
「…それ、は」
彼が今どんな顔をしてるのかわからない。
でも、広瀬さんの腕はさらに強く、私を拘束する。彼の抑えた声が耳朶を打つ。
久世君はよくわからない人だ。
好意を伝えてくるものの、それ以上はないし、本当にそうなのかな?と思ってしまう。理子が言うには”天然”らしいけど、それで片づけていいものなのか。
「したいんだけど、いいの?」
「…した、い?」
「抱きたい」
その言葉だけで頭のてっぺんからつま先まで甘美な刺激が走る。
「…好きですか?私のこと」
「好きじゃなかったらデートに誘わないし、合鍵を渡したりなんかしない」
「…」
「likeじゃなくて、loveの方」
そう言って体を離したかと思うと、口角を上げていった。
―好きだよ、千晴
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