母ちゃんは帝王

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「小童、今日はここまでだ。褒めて遣わす、よくやった。終われ」 どこからともなく美味しそうな匂いが漂ってくる。 「今日は貴様の好物のコロッケだ。泣いて喜べ」 「陛下......!有難く、頂戴致します......!」 陛下のお作りになられたコロッケはたいへん美味であった。 「良く噛み締めろ、それが労働の対価だ」 「明日から朕はいつも通りパートである。ゆめゆめ勉学を怠るな」 「は。御意に」 陛下はキッチンへお戻り遊ばされた。 「はぁー、なんだったんだ?今日の母ちゃん」 一気に肩の力が抜ける。 帝王に危機意識を感じ大臣スイッチを入れて事なきを得たが、それにしても今日の母ちゃんは特別おかしかった。まあ、明日にはいつもの母ちゃんに戻っているのだろうけど。 完食した食器をキッチンへ持っていく。俺は再び大臣スイッチを入れた。 「陛下!たいへんおいしゅう......ん?」 母ちゃんがキッチンの椅子で眠っていた。 そういえば、今日は有給だったのにわざわざ俺の勉強をみてくれたんだよな。それに、母ちゃんが帝王になるって言いだしたのも俺のためだし。 「母ちゃん、勉強みてくれてありがとう。ご飯うまかった」 そう言って、俺は静かに皿を洗った。 明日は俺も母ちゃんのために何かしたいな。 そう思いながら、俺は寝た。 ジリリリリ 目覚ましが鳴る。 「起きろ小童、健康は規則正しい生活から始まる」 「............え?」 「朕はパートに行ってくる。貴様は義務を果たせ。では」 そう言って、母ちゃんが家を出た。 俺は呆けていた。 「まだやるの、これ......?」 こうして、俺と帝王母ちゃんの奇妙な夏休みが始まった。
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