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都市の中央に位置する討議の間。そこに2つの異なる主張を持つ代表者たちが集まっていた。
彼らの議題はただひとつ。
『豊かな人生を送るため、身につけるべき能力はどちらか?』
青いローブを着た3人の男は【知識】をその答えと信じる若者たち。
相対するは【知恵】。シンボルの赤いローブに身を包んだ年寄り男がひとり、ぽつんと立っていた。
若者たちは数にまかせ、自分たちの主張を口々に叫び始めた。
「知識とは、例えれば花の種の見分け方。たくさんの種類を集めれば、多種多様な花が咲くだろう!」
「知識とは、例えれば花の育て方。豊かな土を知り、最適な気候を知れば、花が咲く確率は格段に高まるだろう!」
「知識とは、例えれば花の見つけ方。花弁の形を知り、香りを知れば、より質の高い香水を生み出せるだろう!」
場が静まった。誰も言葉を発しない。嵐のような激しい言葉の弾丸を浴び、相手の心が折れてしまったのか。
いや、違う。老人の信念が揺らぐことはなかった。
「答えよう」
赤いローブの男は、にやりと笑った。
「知恵とは、例えなくとも人の使い方。多様な品を売る種屋を見つけ、優秀な花師を雇い、高名な香水師に惜しみなく金を渡してみよ。知識なぞ無くとも、人生は最後まで豊かなものになるのではないかな? では反論を」
(知識vs知恵 おわり)
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