「お母さん」

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「わぁー、結衣(ゆい)ちゃんの髪型、可愛いね!」 「えへへ、ママがやってくれたの!」 「杏奈(あんな)ちゃんの手提げバッグも可愛い!」 「ママが作ってくれたんだー!」  小学校に上がると、私はそれなりに友達もできて、楽しい学校生活を送っていた。  同級生はみんな、自分の母親のことを「ママ」と呼んでいた。 「怜ちゃん、今日学校終わったら遊ぼうよ! ママがクッキー焼いてくれるって!」 「うん、帰ったらに聞いてみるね!」 「怜ちゃん何でママのことお母さんって言うの?」 「怜ちゃんもママって呼べばいいのにー」  私だけが、自分の母親のことを「お母さん」と呼んでいた。  それがなんだか恥ずかしくて、私は母の話をあまりしないようにしていた。  母親のことを「ママ」と呼んで笑う周りの子たちが、とてつもなく羨ましかった。 「お母さん……」 「なぁに、怜?」 「何でお母さんのこと、ママって呼んじゃダメなの?」  ある時私は、勇気を振り絞って聞いてみた。 「そうねぇ……怜が大きくなったら、分かるかもしれないわね」  母は少し考えて遠い目をすると、それ以上答えてはくれなかった。
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