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「いやいや、年にたった一度、そんな日を設けるくらいならさ」
たった一度の部分を強調していった母。
その意味を考えたが、すぐにその答えが明かされた。
「毎日ちょっとずつ、なんでもいいから家事を手伝ってくれれば、そのほうがよっぽどありがたいんだけど」
「…………」
返す言葉がなかった。僕たち兄弟は、表情を失ってただ立ち尽くすだけだった。
それでよかったのか、と思ったし、ある程度の手伝いはしているつもりだった。
ただ、それでは足りなかったということだ。
母の日に特別なことをするのを嫌がっていた僕だけど、だからと言って普段から積極的に手伝いをしているわけでもなく、必要に応じて動くくらいのことしかできていなかったのだ。
参りましたと言う他なかったし、やはりなんというか、僕はこの人の子どもなんだなと思った。
日頃の行いの改善を暗に求められた僕たちは、その日以降、母親からダメ出しを受けながら、少しずつ家事を手伝うようになった。
我が家から母の日という概念がなくなった瞬間だった。
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