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男兄弟の勘違い
「なぁ、今年はどうする?」
「どうするって、何の話?」
「母の日だよ。今週の日曜だぞ」
「あぁ……今年もその季節が来たか」
僕たち兄弟は、ゴールデンウィークが終わったあたりから、毎年似たような会話をしている。
母の日。
五月の第二日曜日に毎年決まって訪れる、普段からお世話になっている母親に感謝をする日。
有体に言って、僕はこのシステムがあまり好きではない。
母親に感謝することが嫌なのではなく、半ば強制的に、母親に感謝しなくてはならないような、この空気感が好きではないのだ。
母親とどんなかかわり方をしていようと、子どもが親に世話されるのは当然であって、それを特別扱いするのはどういうことなのだろうと、いつも思う。
だからと言って、子は親に育てられるのが当たり前だと、ふんぞりかえって甘やかされていればいいと思っているわけではない。
僕たち兄弟は、家族には恵まれているというか、普通に父親と母親がいて、決して裕福とは言えないまでも、何不自由なく生活することができている。
世の中には母親がいなかったり、いたとしても良好な関係が築けていなかったりして、母の日なんて無縁の暮らしをしている人もいるのだろう。
そういう人たちと比べたら、母の日にどうしようか悩んでいる僕たち兄弟の境遇は恵まれているのだと、そういう理解はしている。
とにかく、母の日だから何かをするのではなく、普段から母親に感謝をし、母親を大切にしていればいいと思うのだ。
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