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「ふぅ、おなかいっぱい」
「どうだった?」
「おいしかったよ。普段はなかなか食べられないものもあったし」
母の日当日、僕たちは家から歩いていける場所にある、台湾料理のお店に行った。
中華料理と似たような感じで、大皿を家族で分け合って食べるような形で、母が言うように普段はあまり目にしないものを多く食べることができた。
兄と二人で会計を済ませ、外に出る。
母もそれなりに満足してくれたようで、今年の母の日は成功したのかもしれない。
「いくらだったの?」
帰り道、母が兄に尋ねる。お金のことを気にされると複雑だ。
「えっと、一万で少しおつりが出るくらい」
僕たちは互いに五千円ずつ出し合い、おつりは僕がもらった。今までで一番お金を使った母の日だった。
「……はぁ」
金額を知ってか、母は露骨にやれやれといった様子を見せて盛大にため息をついた。
あれ、やっぱりダメだったか?
「え、なに?」
兄が恐る恐るといった様子で声を出す。僕は黙ったまま、前を歩く母の背中を見る。
「あのさ」
少しだけ間をおいて、母が切り出した。今日の採点がされるときだ。
「母の日だからって、こうして特別なことをしてくれるのは嬉しいんだけど」
だけど。
この時点で今回も不合格ということが確定してしまった。
「そんなに高いお金を払ってまで、してもらいたいことなんてないのよ」
そりゃあ、まぁ。
僕たちが自分たちで料理ができれば、はるかに安上がりで済んだだろう。
「いや、たまにはこういうにもいいでしょ」
兄がこう答えた。何も悪いことはしていないはずなのに、まるで弁解のようである。
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