お母様の言う通り

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『あんたらでも、肉は肉なのよね。焼いて食べたら、お腹は膨れるのかしら』  私達は恐怖しました。  この時もう、生き残っていたのは私の一つ上の兄と、二つ下の妹だけ。当時、私は七歳くらいであったと思います。  このままでは、私達は食べられてしまう。実の子を食べて腹を満たそうなどと言い出す親が、真の親であるものか。きっとこの女は悪魔であるに違いない。私はそう思って、ついに街を逃げ出しました。  そして、大通りを歩いていた一人のとても綺麗な女性に助けを求めたのです。 『お願いします、助けて……助けてください!魔女に、殺される!』  当時、魔女狩りというものが行われていたことを、情弱である私めも辛うじて知っていました。何故ならば、広場で何度もそのような“イベント”があって、時折私もそれを目にする機会があったからです。  私が助けを求めたその人こそ、フラナ修道院の院長、修道女のヨゼフィーネ様であったのです。彼女が私の訴えをどのように受け止めたのか、今となっては定かではありません。しかし、ボロボロで薄汚く、誰がどう見ても最下層の階級であることが明白な私の手を取り、“よくぞ教えてくださいましたね”と頭を撫でてくださったのです。  さらに私達を保護して身体を洗って下さり、パンとミルクをご馳走してくださいました。そして私達を産んだ“母親”であった女は、魔女として火炙りされるに至ったのです。  私にとって、あの女は正しく魔女でありました。  その魔女を退治してくれたヨゼフィーネ様を、私は正義の味方――神様の遣わせてくれた“聖女”様であると信じたのです。 『わたくしの修道院にいらっしゃい、ラウラ』  齢三十歳という年で、修道院の院長にまで上り詰めたヨゼフィーネ様は。同性である私の目から見ても、まるで天使のように美しい女性でございました。明るい色の茶髪、透き通るような青い目。その人が、私の手を取り、修道院で面倒を見てくれると言ったのです。  ヨゼフィーネ様は自分の修道院で、孤児たちを積極的に引き取るという慈善活動をなさっていました。孤児達に正しい教えを、文字の読み書きなどの知識を与えて下さり、最終的には立派な修道女や修道士になるように育ててくださっていたのです。私達のような孤児を助けてくれるのみならず、将来の職まで与えてくださる。なんと素晴らしい方なのだと思いました。
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