お母様の言う通り

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『此処が、貴女達の新しい家です。わたくし達は、此処では家族も同然の存在。ラウラ、わたくしのことはお母様<ムター>と呼びなさい。今日からわたくしが、貴女の母親なのですから』 『は、はい!ムター・ヨゼフィーネ!』  ヨゼフィーネ様は、実の母親よりずっと母親として尽くして下さいました。何故ならば孤児院では、毎日パンやミルク、いくつものおかずやスープが振舞われ、毎日お腹いっぱいご飯を食べることができるのです。清潔な衣服も与えられ、勉強も教えてもらうことができました。私達がやらなければいけないことはただ一つ、ヨゼフィーネ様のお仕事をお手伝いすることだけです。  ヨゼフィーネ様は、私達兄弟姉妹を苦しめていたような恐ろしい“魔女”を断罪するという、素晴らしいお仕事を主導してらっしゃいます。この世界を危機に陥れ、神様の権威を脅かす悪い魔女たちを倒し、この国に平和を齎すのがムターの仕事なのです。私達はそのための記録をつけたり、必要な道具を作る工場で働くのがお仕事でした。私や姉妹は文字が読めなかったので、まずは工場で道具を整備したり作ったりすることがメインだったように思います。 『ラウラお姉様、これ、何に使う道具なのかな?』  その道具が、何に使われるものなのか?私達はよくわかってはいませんでした。  全世界から集めたえりすぐりの、魔女を倒すために必要な道具だとしか聴いていなかったのです。  妹が不思議そうに尋ねて来たのは、鉄製の長靴のような道具でした。とても硬くて重いものです。それと、トンカチのような道具、杭のような道具。これらをセットにして運んでおくようにと言われていました。 『靴みたいに見えるわ。悪い人に履かせるのかもしれないわね』 『でもお姉様、履かせたらどうするの?』 『きっと、この重たい靴を履かせてたくさん歩かせるのよ。重いから、とっても疲れるわ。罪は重たいもの、背負い続けるものだとお母様も仰っていたでしょう?』 『でも、このトンカチと杭は何に使うの?』 『え?……うーん……?』  道具として整備しておけと言われるのは、トンカチと杭の方のみ。錆びて生臭い臭いのするブーツの方は、外側だけ磨いておけばいいと言われたのが不思議でした。私達が聴いていたのはただこの道具の名前、“スペインの長靴”ということだけです。  他にも、不思議な道具はいくつもありました。
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