【Collection 4】ケンカ

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もう何度目かも分からない。 これまで数えきれないほど重ねてきたというのに、 まだ足りなくて、まだ知らない。 喉の奥深くが渇くみたいに 欲しくて欲しくて、たまらないんだ。 傷を刺激しないように、唇表面を優しく舌で(なぞ)る。それに反応してうっすらと開いた入り口に沿わせて、少しづつ侵入していく。 それから翔太の舌の上をトントンと刺激してやると、俺のに絡むよう静かに巻き付いてきた。 身体の力が抜けてもいいように、背中に腕を回し支えてやりながら、いつもより随分ゆっくりとしたキスを。 あいつの事なんか、少しも頭に過らず済むように。俺のことだけでいっぱいになるまで──。 まるで、この世界に二人だけみたいに。 「──ん、せ、ち……さん」 「なに?」 翔太に胸をぐっと押され、無理やり引き離された少ない隙間で言葉を交わす。 「あの、するなら、その、先にシャワーを」 「いや、今日はしないよ」 「──え?」 俺の言葉があまりにも予想外だったのか、翔太がポカンとしている。 「今日はしない。お互い明日も仕事だしな。キスだけだ」 「あ、そう、そうですよね」 勘違いしてましたって顔がカーっと、どんどん赤く染まる。 こいつはホント、いつまで経っても、どれだけ一緒にいても初々しい。そんなところがかわいくて、今すぐにでも抱きたくてたまらないんだが。 今日は、今回だけは我慢だ。そう、我慢するんだ俺。カッコ悪くて、これ以上翔太に"ごめん"は言いたくないから。謝罪のかわりに、そして自分を戒めるためにも。今はキスだけだ。 「なぁ、もう少ししていいか?」 とは言え、まだまだ全然足りないので。 「えっと……」 「ダメか?」 あぁ。結局女々しいこと言っている。 「ダメっていうか、その」 「その?」 「か、」 「か?」 「身体が、反応……しちゃうんです、けど、これ以上は」 「はは、早いな」 「し、仕方ないじゃないですか! だって征一さんのキス……」 「俺の? なに?」 ちょっと楽しくなってきた。 「な、なんでもないです」 「なんだよ、言えよ」 「イヤです」 「言えって」 「…………」 「言わないならする」 「あ、ちょっ、」 翔太が言い終わるより早く、深く唇を合わせた。さっきまでのキスのせいで、お互いに潤った咥内でまた一つに重なる。もう戸惑いはない。 音が、熱が、感触が、繋がっている部分を際立たせるように主張している。その一つ一つが、俺の細部まで刺激して、全身が翔太に犯されているような気分になってくる。 「……も、だめ、って」 「もう少し」 「ん、せい、いちさ」 「キスだけだから」 「だ、から、それが……それが! ダメなんです!」 今度は勢いよくベリリっと身体を剥がされた。翔太は怒っているのか、ちょっと潤んだ瞳で俺を睨んでくる。 「征一さんの、さっきからキスだけってなんなんですか!」 「だから今日はしないって」 「だったらそんなエ、エロいキスもしないでください!」 「えー」 「えーじゃないですよ! もぅ!」 「大丈夫、勃ったら抜いてやるって」 「ほら! それじゃもうキスだけじゃないですよね!?」 「……ん? そう言われるとそうだな」 「ほらー」 「ごめん」 あ、結局謝ってるわ、俺。 「ぷっ、あはは、もー征一さんはー」 「じゃぁ本当に最後、もう一回だけ」 「本当に最後、ですよ?」 「はい」 「じゃぁ、もう一回」 ごめんの代わりに、愛してるのキスを──。 ───────── ケンカ end ─────────
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