【Collection 5】吐息は静かに

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ゆっくりとお花見をする余裕もないくらい、バタバタと忙しいまま流れゆく春。 ふと見上げた空には、すっかり散ってしまった桜の木に、青葉がゆらゆら柔らかい風に揺れていた。 引っ越しの荷物がようやく片付いた週末。 今日は征一さんの友人である辰典(たつのり)さんが遊びに来る予定になっている。 それなのに、征一さんは朝からため息ばかりだ。 なんでも、「あいつが来ると部屋の価値が下がる」んだそう。 意味はよく分からないけれど、俺はもう知っている。 二人はとても仲が良いってこと──。
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