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リビングに戻ると、俺が抱き抱えているビニール袋を見て、征一さんが固まった。
「なんだそれ、菓子? 酒は? まさか菓子だけ?」
「まぁまぁ焦るなって捺さんよぉ! ちゃんと考えてっからさ! って、うわーめっちゃいい部屋! 広いしそれに超きれーじゃんずりぃ! あっ! しかも広々キッチンかよ! なんだこれ勝ち組かっ!」
リビングに入るなりはしゃぐ辰典さん。
「来て早々うるさい奴だな。あ、おいコラ、ちょっと待てって! お前こそ焦んな!」
キッチンに入ろうとしているその襟元をがっちりと掴んで止める征一さん。
「ねーねー翔太くん」
「え、あ、はい?」
いきなりこちらを振り返り、俺を見つめながら辰典さんが言った。
「なんかぁ、この部屋さぁ、捺っぽくなぁい? もしかして翔太くんの趣味じゃないんじゃないのー?」
「え?」
「ほらほらぁ、キッチンのあの几帳面なスパイス達の置き方とかさぁ。なーんか格好つけてる感じだしー。リビングだって全然物置いてないじゃぁん? なーんか気取ったインテリアにしちゃってさぁ、翔太くんが暮らしづらくなってないかなって、俺心配になっちゃうわー」
「えーあはは、全然そんな事ないですよー」
「ほんとーぅ? って、痛い!」
辰典さんの頭上に征一さんの拳骨が。
「黙って聞いてりゃお前は好き勝手言いやがって!
それに誰の真似だよその喋り方! 気持ち悪りぃんだよ!」
それは俺も、誰だろうって思ってた。
「だって気になるじゃん! この部屋に翔太くんの気配を感じねーんだもん! なんだよこれ、モデルルームかっつーの! 羨ましいなぁ!」
「お前が逆ギレすんな!」
「ま、まぁまぁ落ち着いてください二人とも。とりあえずあっちで座って話しませんか?」
だって俺達キッチン前で立ったままだし。それに辰典さんは上着も着て鞄も持ったままだ。
俺はこの場を宥めて、リビングへ進むよう二人の背中を押した。
「今日はせっかくの休みだし、わざわざ辰典さんだって来てくれたんですから、すぐ怒っちゃダメですよ。ね、征一さん?」
「………」
「捺は翔太くんが絡むとすぐ怒るんだよなぁ」
「だからうっさいっつの!」
「いて! あーまた殴ったぁ! 暴力反対!」
「もー征一さん!」
ソファまで数歩しかないのに、またこれだ。
この二人、本当は仲良いはずなんだけどなぁ。
いっつもケンカになっちゃうの、なんでなんだろう。
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