【Collection 1】Sweet Valentine

5/12
前へ
/58ページ
次へ
翌日、俺は仕事をしながら考えていた。 チョコ、どうしよう……と。 どうせプレゼントするならやっぱり手作りの方がいいのかな。捺さんはいつも俺に手料理を作ってくれているんだし。でもなぁ、信用されてないんだよな。俺がキッチンに入るとすごく心配そうな顔で見てくるし、包丁を触っただけで過剰に反応してオロオロされる。そこまで料理できなくないんだけど。 それでも一人で作るのはさすがに難しい気がする。チョコ?は作った事ないし。そうなると誰かに協力してもらうべきか。俺が知っている中で料理がうまい人は…… ──俊、かな。 俊は寮でいつも何かしらぱぱっと作ってくれてたし。手作りお菓子も食べた事あるけど、全部美味しかった。 だからと言って、さすがに無理だよな。「彼氏にチョコあげたいから協力して」だなんて。そんなこと言えるわけがない。きっと俊は俺の事なんてもう好きでもなんでもないと思うけど、それでもしていいお願いとそうじゃないお願いがある気がする。 せめて作り方だけでも聞いてみようか──いや、だめだ。俊に頼るのは。それに電話で聞いたりメモをもらったくらいで理解出来る気がしない、そもそも。 ……と、とりあえず、どんな感じなのか知るために一人でやってみるか。まずはそれからだ。 俺は、会社帰りにコンビニで板チョコを買ってみた。それから気がついた。これはもうすでに「チョコ」だと。 チョコとして完成しているんだよなぁ。板チョコって言うくらいだし。充分甘いもんな。このチョコをどうやってチョコにするのだろうか。全然分からない。 でも多分、粘土みたいな事なのだろう。コネて形を変えましょうというやつ。そうなのであれば、この固いのを一度崩して整形し直す必要がある訳か、ふんふん。なんとなく分かってきた気がする。 キッチンに置いたチョコとにらめっこした結果、水で溶かしてみる事になった。俺は深めの皿に水を半分ほど入れ、そこに砕いたチョコを入れた。でも全然溶けない。今は冬だから時間がかかるのかも。そんなのは待っていられないからそのままレンチンしてみる。そしたらちょっと溶けた。でもバシャバシャしてる。これはなんだろう。 スプーンで一口飲んでみると、"チョコの匂いがする水"だった。これじゃない気がする。多分だけど。 あ。もしかして水じゃなくて牛乳だった!? 甘いお菓子とかケーキって、牛乳使ってたりするんじゃなかったっけ? 俺すごい事に気づいてしまったかもしれない。そう思い早速同じやり方でレンチンしてみた。 スプーンで一口飲んでみると、"チョコの匂いがする牛乳"だった。これでもない気がする。美味しいけど。 はぁぁー、やっぱダメか。 仕方ない、レシピを見よう。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

373人が本棚に入れています
本棚に追加