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よく眠っているようだから、起きるまでこのままそっとしておいてあげる事にした。
それから眩しくないようにリビングの照明を少し暗くして、俺達はリビングから距離をとった。
「眠いか?」
ついついあくびをしてしまった所を、征一さんはしっかり見ていたみたいだ。
「すいません、急に睡魔が……」
今日は辰典さんが来てくれて、俺も楽しかった。そのせいだろう、とても心地よい疲労感が目蓋を重くしている。
「俺達もそろそろ寝るか」
「そうですね。寝ましょうか」
昼間からお酒を飲んで、美味しいおつまみもお腹いっぱい食べた。今日はとてもよく眠れそうだ。
リビングの扉を静かに閉めて、二人で廊下に出た辺りで、俺はあることに気がついた。
あれ、そういえば。
今日は一緒に寝ない方がいいのかな。
普段は何もない限りほとんど征一さんの部屋で一緒に寝ているけれど、今日は辰典さんがいるし、別々に寝た方がいいんだ……よな。
「どうかしたか?」
廊下で立ち尽くしている俺の耳元で征一さんの声が響いた。
「いえ、あの、なんでもな──」
くはないか。
征一さんはどう思っているのか、聞いてみよう。
「きょ、今日ですけど、」
なんか焦っちゃって変な声が出た。
「俺は、自分の部屋で寝た方がいいですよね」
「ん? なんで?」
「え? あ、だって辰典さんがいるんだし」
「なんか関係ある?」
そう言われてしまうと、そっか関係ないのか。 と一瞬思ってしまった。けれど、
「もし辰典さんが部屋に来ちゃったりしたら、その……」
「鍵閉めるんだから平気だろ」
そう言われてしまうと、そっか鍵閉めるからいいのか。 と一瞬思ってしまった。けれど、
「で、でも! なんか、その……やっぱり一緒だと、色々まずい……と言うか」
「なにが? なんで?」
リビングの扉はしっかり閉めているけれど、俺はとても小さな声で訊いた。
「だ、だって、もしシたくなっちゃったら、どうするんですか」
「そしたら、シたらいいだろ」
「なっ!」
「大丈夫、バレないって」
「無理です! ぜっったい無理!」
「なんで無理?」
「……え?」
「声、我慢できないからか?」
「……っ!」
「ん? 図星?」
征一さん、悪い顔している。
俺に意地悪してる時、いつもこの顔になるんだよね。
「はは、顔が赤くなった」
と笑う征一さんは、いつも余裕でずるい。
「まぁまぁ、とりあえず部屋入ろうぜ。廊下寒いって」
「あ、ちょちょっと待って下さい! 俺まだ一緒に寝るなんて言ってな──」
いんですけど! と、
言い終わる前に手を引かれ、征一さんの部屋の中まで連れて行かれてしまった。
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