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「あの、征一さん。俺うるさかったですか?」
「なにが?」
「その、今、声が、あんまり抑えられなくて」
「あぁ平気平気。いつも通り」
「いつも……って、え? ほ、本当に?」
あれ? 俺の必死の努力は?
「まぁ、八割、九割ってとこか」
「……うそだ」
「ほんと。吐息が熱っぽくて、口塞いだところでただ漏れ。すげー感じてるって声だった」
「だ! だって……」
征一さんに触られると、すぐ気持ち良くなっちゃうんだよ。
「大丈夫。近くにいる俺にだけ聞こえる声量だったから安心しな。無理して息止めたりすんなよ」
優しくそう言ってくれる征一さん。
でも、本当に大丈夫だったのかな。リビングからなんの音も聞こえてこないし、辰典さんは眠っていると思うけど……。
俺はベッドに上がってきた征一さんを、黙ったまま見つめた。
「続き、していいか?」
「……はい」
不安はまだあるけれど、今はもう征一さんのことしか、考えられない───。
俺はさっき言われた通り、四つん這いの姿勢になった。すぐ後ろに征一さんの気配。これから何をされるのか分からなくて、またドキドキと鼓動が早くなる。
スエットの上着を後ろから捲られると、露になった背中に征一さんの舌が這う。腰から少しずつ首元まで伸びていく。
「っん、くすぐった、い」
けど、嫌じゃない。
俺に重なるように後ろにピタリとくっついている征一さんの手が、また俺の胸先まで。今度は両方の手でどちらも弄られる。
「あっ、ちょ、ま、待ってくださ……」
よく考えたら、この姿勢だと手を下に突いていて自分の口を塞げない。
「せい、ちさ、あっ、ん、」
背を這う舌が、乳首を摘まむ指が、同時に攻めてくるせいで、快感が電流のように身体中痺れながら伝う。
ゾクゾクする。
さっき果てたばかりなのに、もう反応してしまいそうだ。それに、やっぱり声が出てしまう。
「ま、待ってください征一さん!」
「んー?」
「すいません。ちょっと体勢変えてもいいですか? 上向きたいです」
そしたらクッションを抱きしめながら我慢できるし。
「じゃあ、俺が下になるから上おいで」
「え?」
あれ、俺が上って?
と考えてているうちに、あれよあれよと着ている服も下着も全部脱がされ、征一さんがベッドに横になった。
「おいで」
腕を引かれるまま、俺は征一さんのお腹の上に乗った。
「違う。もうちょい前」
「前って、な、なにするんですか」
ぐいぐい両手を引っ張られ、征一さんの首もとまで来てしまった。俺は横に寝ている征一さんを両足で跨ぐようにしながら膝立ちをしている。
部屋が薄暗いとはいえ、征一さんの目の前に俺のモノがあるのは、さすがに恥ずかしい。
「あの、なんか、この格好……イヤなんですけど」
「これなら上向けるからいいだろ?」
それは、そうだけど。
俺が思ってたのと、だいぶ違う。
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