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三年前、卒業式の後、松山総司は行方不明になった。
捜索願いが出され、僕らはみんな警察に事情を訊かれた。カラオケで打ち上げをやったときまではいたがその後は知らないと、当時のクラスメイトは口を揃えて証言した。結局、その後の松山の足取りは依然として不明のままだ。──僕達四人が喋らなければ、の話だが。
あの日、打ち上げの後、松山は僕達と一緒にいた。暮れ始めた町から少し外れた方に向かった僕らを、幸か不幸か誰も見ていなかった。結果的に僕らは望みを果たし、それは今まで誰にも知られることはなかった。
「逮捕は…さすがにないんじゃないか?」
「そうだよ…俺らが直接なんかしたわけじゃねえし」
「うん…」
西条は額に手を当て、不安げに続けた。
「小さくだけど、死体が見つかったこともニュースになって…警察から連絡が来た時、ほんと怖くて…」
「何? 取り調べとか受けたの?」
「ううん、思い出したことがあったら言って欲しいって」
卒業後、僕と今治、新居浜の三人はそれぞれ県外に進学し、西条だけが地元に残った。地元在中の同級生から順に聴取されているとすれば、そろそろ自分達にも連絡が入ると思われた。
「それで…?」
「それでって…それだけよ。答えようもないじゃない、あんなの…」
「それは…そうだけどさ…」
そのまま、しばらく沈黙が続いた。場の重苦しさに耐えかねた僕が発言しようとした時、
「ねえ…」
西条が意を決したかのような顔で問いかけた。
「あの日、一番最後まで松山君といたのって、…誰だったの?」
「っ…、」
「……」
新居浜は絶句し、今治は黙り込んだ。僕は二人の反応を注意深く観察しながら、一つ溜息をついた。
「…最後…最期に、か…」
僕は目を閉じ、決して忘れることの出来ないあの夜のことを思い出していた。
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