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県民にとっての8月9月
8月も半ばに入り、"盆"の時期が来ている。一般的に8月の12日から15日までの期間がそう言われているが、普通に考えれば粛々と先祖の墓参りをするか親族との会合をするかの時期なのに"徳島"は違っていた。
その期間、阿波踊りで徳島駅前はごった返す。"マチアソビ"というアニメや漫画、ゲームの祭典は年に2回あるが"徳島"と言われれば阿波踊りと言うのが普通だろう。
…と、言われても地元で育てば毎年毎年目にするものに、それ程有難みは感じない。ざわめきの中にカンカンと金属音が混じり、"ヤットサー"の掛け声が飛び交うお囃子も慣れたからこそそんな事が言える。阿波踊りの期間に"踊り"を観に来ている人の多くは県外人、"縁日"を楽しみに来ている人の多くは徳島県人だろう。特別な踊りよりも、少ない縁日は楽しくて仕方が無い。
目的の違う日本人がぎゅうぎゅうに詰まった徳島駅前の通りを監視するために雑踏警備へと駆り出される警察官にとっては"せめて1日にしてくれよ"と思いたくなるぐらいかもしれない。住み慣れたら地元の祭りなんてそんなものだ。
そう言った意味では、9月に開催される"狸祭り"も似たようなものである。CMで流れる"桶屋が夜中に桶づくり、コトコトコトコトコトコトコトコト"という歌い出しは、徳島で生まれ育てば何度も耳にする歌。
…ここまで言っておいてだが、物事の価値は人によって違う。見慣れたものでも、違う人からすれば"とんでもなく素晴らしい"ものだという事は、今回の物語における重要な話である。
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