21人が本棚に入れています
本棚に追加
「そう、ですかね。」
「当たり前よ。…"とりあえず行く先"さえあれば何とかなるわ。」
"だな"、と話の流れを知らない彼は答える。
湿っぽい話をヒッチハイクの途中でするものではないと言いたげにラーメンが4杯、テーブルに置かれた。コクのありそうな茶色のスープに、甘辛そうな色に煮込まれた牛肉、メンマともやし、青ネギの乗ったラーメンは見た事が無かった。
あるハズの味玉もチャーシューも無い。
"とりあえず"彼女がやったようにラーメンの真ん中に生卵を割って入れる。真似をするように生卵を放置し一口目をすすると、細い麺のしっかりした味に"豚骨の入った醤油"のコクが舌に広がっていく。
チャーシューの代わりにあったと思われる牛肉の煮込まれたものは、生きた食感に甘辛い味が美味しかった。"すき焼き"を脳裏に灯すような味のそれを楽しんだ後に、彼女の真似をして溶いた生卵を絡めながらスープの絡んだ麺をすすると、卵のまろやかさも相まって不思議な一口であった。
堪能したコクは舌に残り続けるのだが、それを冷たい水で流し込むのが"徳島ラーメン"のもう1つの楽しみ方というのは自然と2人にも理解できたのである。
(思ってる"ラーメン"とはまた違った気もするが、こういう"他の料理"のエッセンスも取り入れた新しい感じもアリだな。モハメド・アリだ。)
しょうもない事を頭に浮かべるのも、若者の特権だろう。
"美味しかった"としか出てこなかった言葉を後にし、4人はまた車へと乗り込み混んだ夜道を進み始めた。
最初のコメントを投稿しよう!