花より女子

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花より女子

9月が過ぎて、何事も無かったように夏休みを過ごした2人は、その先の大学の後期を迎えていた。後ろが何をしているのか分からないぐらいに広い講義室の、勿論後ろの席に座って友達数名と一緒にだらだらと講義を受けていた(居眠りしたりスマホを弄っている様子を"講義を受けている"と言うべきでは無いが本人達は受けているつもりである)。 「おい、見てみろよ」 隣で居眠りをしている男は、ヒッチハイクに同行してくれた"盟友"とも言うべき存在であった。その男を小突いて起こし、SNSでフォロワーの更新分をサーフィンしていて発見した写真を黄門様の印籠ばりに見せる。 昼間の白色光と薄いトーンの青空をバックに水着姿でこちらに視線を向ける大人の女性の写真。まだまだ人生のあれこれを知らない大学生にとっては十分過ぎる程に"魅惑的"で"魅力的"、そして"刺激的"であった。 「波がかかった栗色のロングヘアに、俺達を包み込んでくれるような深い青のつぶらな瞳。おまけに方言を操るギャップ、俺達はこの人の魅力を多くの人に知ってもらうべきだと思うんだ。」 たまたま通りかかった徳島で出会った"彼女"のアカウント。それをフォローして投稿を眺めていた彼は、これも"予定調和であったか"のようにファンになっていた。そんな彼が徳島で活動するグラビアアイドルの信者を増やし、ファンクラブをサークル化してしまったのは全く別の話である。 (俺はまた、徳島に行くぞ!) 自分の将来の行く先はまだ分からないが、彼にとっての"とりあえず行く先"は見えていた。 徳島の観光イベントと言えば"阿波踊り"と"マチアソビ"があるにも関わらず、グラビアの彼女の撮影会に行きたいと思った彼が"一眼レフを買うため"に貯金をしているのも、全く別の話である。
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