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狂犬まどか
「ちょっと! 海斗に何すんのよ!」
あたしは黒マントに食って掛かった。
「ふん、活きがいいな。魂の根もまだこんなに太い。これでは刈るのに骨がおれる。
先ずは簡単そうなチビの方から……」
黒マントはブツブツとそんなことをいいながら、優也の方に向き直った。
「なんなの? 優也になんかしたらただじゃおかないんだから!」
あたしは何か武器になるものを探した。しかし、点滴台を掴もうとした私の手はスカッとすり抜ける。
「フハハハッ!
霊体で実体に触れることなどできん!
大人しくしていろ、順番に刈ってやる」
そう言って黒マントが優也に向かって鎌を振り上げた瞬間、あたしの中で何かがブチッと音を立てた。
「……あんたか? あたしから次々と大事な者を奪ってくのは」
黒マントはギョッとしたように一瞬たじろいだ。
「もう赦さんよ?」
あたしの中の狂犬まどかが久しぶりに目を覚ました。
あたしは黒マントにメンチを切る。
「な、なんだ?」
あたしの怒りに気圧されたように黒マントは鎌を持つ手を緩めた。
神経を研ぎ澄ませた今のあたしが、そんな隙を見逃すはずがない!
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