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部屋の中は特にいつもと変わらなくて、意外にも余り散らかっていない勝哉さんの部屋
その部屋の中心で絨毯の上に寝そべり煙草の煙を吐きながらテレビを見ている勝哉さんの後ろ姿
戸惑いながらも俺は彼に近付き、彼の横に腰を下ろした
「…………」
『……』
俺を全く見る事なくずーっとテレビに視線を向けている勝哉さん
部屋の中に入ったはいいが何をどう話そうか……
『あの、最近俺んち来ないですよね』
「…………はぁ?」
やっと目が合った
『や、いつも来てくれてたのに急に来なくなったから何かあったのかなーって……』
「別に何もねーよ」
そう言って彼はまた視線をテレビに向け煙草を吸い煙を吐いた
『でも元気そうで安心しました。勝哉さんも一人暮らしだし倒れてるんじゃないかって凄く不安になって……』
その時勝哉さんの携帯が鳴った
『あ、どうぞ』
「…………」
勝哉さんは携帯画面を見た瞬間眉間にシワを寄せ、電話に出た
「……おー、あるある。てめぇ忘れもんなんかするんじゃねーよ!テーブルの上に置いてるから勝手に持って行け」
そう言って直ぐに携帯を置いた勝哉さん
忘れ物?
テーブルの上?
そしてそのまま視線をテーブルに向けると、そこには女物のポーチが置かれてあったんだ
『あの、あれは……』
「あ?てめぇーには関係ねーよ」
『…………』
関係ない
そう言われ胸がキュッとした
女物のポーチ……
あんな感じの物を俺は見た事がある
化粧品とかそんな物が入ってるやつだ
それが一体どうして勝哉さんの部屋に?
まさか女の人がここに泊まって…………
そう思った瞬間泣きそうになった
勝哉さんに彼女が出来たとしても、俺には何かを言う権利なんて何もないんだ
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