紅の鎖

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 空気の密度が変わる。これが人体から発せられる気という類のものだろう。自分の顔の前に誰かがいるのがわかる。  『陽一、喉が乾いているのだろう』  気味の悪い猫撫で声で話すピエロの生暖かい息が肌に触れた。  ベコッベコッベコッ  プラスチックがへこむ音だ。  トン  何かを床に置いた音がした瞬間、ピエロは俺の前髪を掴んで頭を持ち上げた。鋭い痛みが毛根に走る。  『痛い!やめろ!』  だがヤツは手を緩める事などしない。
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