紅の鎖

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 「ああ。でも、もうやめる。」  兄が怖い。和月はその思いを悟られぬ様に態度に気をつけながら急いで分厚い本を閉じた。  「雨音がうるさくてもうダメだ。部屋に戻る」  「和月」  突然、リビングから立ち去ろうとした和月の身体を陽一は強引に引き寄せ食い込む程強く抱きしめた。そして細い首筋に甘噛みし逃さぬ様に和月の髪を強く掴む。 「兄さん。まさか!薬を?」 以前にも非合法な向精神薬を過剰摂取した際にも同じ様な事があった。あの時は異常な興奮状態の後、気を失った。 「落ちついて、兄さん。」 抱きつかれた体を引き離そうとした瞬間、和月はソファーに押し倒された。 「ああっ!」 体格は同じとはいえ、普段からスポーツ等で体力がある陽一の力は強く和月の身体の自由を簡単に奪う。抵抗する両手を押さえ込むと陽一は和月は怪しい上目遣いで首筋からうなじにかけて柔らかい舌で蹂躙する。 「や。やめて。兄さん!」 雨音と雷鳴が和月の懇願をかき消す。
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