紅の鎖

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 和月は自分跨る兄の背中から黒い羽根が生えた幻影を見た。シャツを脱ぎ捨てた闇の中に浮かび上がる白い肌と筋肉。  美しい。  和月の恐怖は闇に溶け新しい何かに生まれ変わる。それは破滅の未来に間違いなく繋がるものであろうとも抑える事は出来なかった。  いや生まれ変わったのではない。気づいたのだ。 ずっと兄を愛していた事を。  和月の圧縮され続けていた感情が今、爆発する。  「兄さん!俺は兄さんと一つになりたい」  陽一は和月の欲求に応えるように唇をゆっくり重ねた。愛撫しあう2人の舌は悩ましく卑猥な音を立てる。やがて身体は重なる。 暗闇の中で何度も激しい稲光に二人の揺れる体は炙りだされる。  弄ぶ陽一、恍惚の表情の和月。  和月の悦びの咆吼は雨音と重なり響き合い一つの愛の音楽になる。狂った儀式は何度も何度も繰り返し朝を迎えるまで永遠に続いた。
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