紅の鎖

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 「すまなかった」  俺はそれ以上の言葉は出す事が出来なかった。  「兄さんはやはり俺の気持ちに気がついていなかった。そして兄さんの口からは男の名前は全く出てこない。兄弟という縛られた常識以上に男がダメなら俺はもう、どうしようもないじゃないか」 「和月」 「雨が、雨が降っているんだ。ずっと」 和月は遠くを見つめ両手で耳を押さえると静かに目蓋を閉じた。  「あの夜の雨が耳を塞ぐと聞こえるんだ。止まらないんだよ」  和月の口元は細かく震えながら強引に微笑みを作り出す。 「僕達は本当は一つだったんだ。神様の悪戯で魂が離れただけなんだ。だからきっとまた一つになれるんだよ」 和月はショックで硬直した俺の身体に馬乗りになると涙で濡れた両手で首を掴んだ。
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