本当の目的

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本当の目的

御子柴楓 十七歳 山に入った途端に結界の中に閉じ込められた。 「箱庭快楽ですね。これは。」 付いて来た結界師が結界を見て呟いた。 「特級結界術だよねー?なんで?」 犬山が気怠そうに話した。 「お前等。何があるか分からんから注意し…。」 ブジャァ!! ピタッ 頬に何かが飛んで来た感触がした。 触れてみると赤い液が付いていた。 これは…血? 「進ちゃん!!?」 佐和先生の左腕が斬り落とされていた。 ボタッ!! 何が起きたんだ!? 「この中に入ったからもう良いよな?」 振り返ると紫色の扇子を持った血塗れの玉村先輩が居た。 「玉藻前はいつも急なんだよ。まぁ良いけど。」 犬山を見ると額から角が生え爪も長く伸び首には鎖が巻き付いていた。 「玉藻前…?アンタ等まさか…。 「此処に居たのか…?」 ジュリエッタ先生が佐和先生を抱き寄せていた。 「フフフッ!!馬鹿みたいじゃなぁ。全然気付きもせんのじゃ。」 そう言って六本の尻尾と耳が現れた。 「妾は玉藻前。玉村と言うのは仮の姿じゃ。そしてそこの男の腕を頂いたモノ。」 玉藻前は佐和先生の腕を拾い上げ、傷口の血を舐めた。 「じゃ、じゃあ…犬山は大嶽丸って事?」 ジュリエッタ先生は戸惑いながら犬山先輩に尋ねた。 「この姿見てまだ気付かねぇの?俺は大嶽丸、そして八岐大蛇の直属の命でこの中に入る人間を消しに来た。」 「消しに来たって…誰の事よ?まさか進ちゃんを!?」 ギュッと佐和先生を庇う様に抱き締めた。 「はぁ?そんな訳ないだろ?ソイツの腕を斬り落としたのも玉藻前が勝手にした事だ。コイツだよ。」 大嶽丸は俺を指差した。 「鬼頭楓。いや、御子柴楓を殺すとの命令だ。」 「!?」 「御子柴…?御子柴って貴方…鬼頭じゃないの?」 ジュリエッタ先生が俺を見る。 大嶽丸が俺が御子柴家の人間だって知っているのか? 「俺は鬼頭の人間じゃない。御子柴の血を引いている。」 「!?。じゃあ鬼頭聖も…御子柴家の?」 俺は佐和先生の問いに頷いた。 もう隠しようがねぇしな…。 「なら…。俺等は生徒を守らねぇとな…。」 そう言って佐和先生は札を傷口に貼り付けた。 札を貼った事によって流れていた血が止まった。 「ジュリエッタ、俺は大丈夫だ。行けるな?」 「進ちゃ…。だって、死んじゃ…。」 ジュリエッタ先生の言葉を聞かずに佐和先生が俺に背を向けた。 「ジュリエッタ先生の言う通りだよ。あんた等には関係ない事だ。俺を守るのに意味はないだろ?結界師さん、先生達を結界で守っ…。」 「お前は学院の生徒で理事長の大事な子だ。それだけで楓を守る意味がある。」 「!!?」 何だよそれ…。 そんな理由で守るのかよ。 アンタはもう…ボロボロじゃねぇか。 「進ちゃんはそう言う人よね…。私達、死ぬ時は一緒よね。」 そう言ってジュリエッタ先生は鞭(むち)を取り出した。 「お前のそう言う所、好きだぜ。」 「え!!?や、やだぁー!!」 この人達…俺の前で何やっとるんだ? 少しでも見直した自分が馬鹿みたいだ。 「それじゃあ…楓の事頼む。」 そう言うと結界師が俺を結界の中に入れた。 「長い話は終わりか?」 大嶽丸が怠そうに佐和先生達を見つめていた。 佐和先生はヌンチャクを取り出しニヤリと笑った。 「今から大人の時間だぜ?大嶽丸。お前の相手は俺がしてやる。」 「へぇ?死にそうなアンタが俺の?良いぜ?玉藻前!!コイツは俺が殺す。」 「男同士の問題じゃ好きにせぇ。妾はこの女じゃな?」 「女の子同士の時間を楽しみましょうよ狐。」 ジュリエッタ先生が笑いながら言うと玉藻前の眉毛がピクッと動いた。 「大丈夫なのか?」 「あの二人は強いですよ。まぁ見ていれば分かるよ?」 結界師が俺を見て笑った。 「ハッ!!行くぜ落雷矢(ラクライヤ)。」 大嶽丸が指を鳴らすと背中に稲妻の槍が無数に現れ佐和先生の方角に放たれた。 「フッ!!」 佐和先生は稲妻の槍を避けつつ大嶽丸の元に向かって行った。 早いスピードでヌンチャクを片手で大嶽丸に振りかざした。 キンッ!! 闇色の刀がヌンチャクを受け止めていた。 それも何本も後ろに現れていた。 大嶽丸は刀を掴み佐和先生に斬りかかった。 シュバッ!!!  僅かの差で佐和先生がヌンチャクを使って刀の走行をずらした。 上手い。 佐和先生はかなり体力や気力が消耗している筈なのに大嶽丸とやり合っている。 ジュリエッタ先生の方に目を向けてみた。 長い棒の釘を何本か召喚していた。 それを場所は関係なく床に配置させた。 「当たって居らぬぞ?それなら妾から行かせてもらうぞ。」 そう言って玉藻前は扇子を大きく振り上げた。 すると風が球の形で現れジュリエッタ先生の方に幾つか投げられた。 だが全く避けようとしない。 「どうして避けないんだよ、あの人…。」 「見てなよ。」 「?」 結界師はどうしてこうも二人の事を推すのだろうか…。 佐和先生の実力は分かったが。 風の球に隠れて玉藻前はジュリエッタ先生に接近しようとしていた。 「来たわね。式神術"網取(あみとり)"。」 そう言って鞭を思いっ切り振り回した。 すると設置してあった棒の釘に鞭が引っ掛かり網のような形の中に玉藻前の尻尾と手脚を拘束していた。 「音爆螺旋。」 佐和先生が札を持ち唱え大嶽丸の体を光の鎖で拘束した。 「「拘束完了。」」 二人は声を合わせて呟いた。 「流石だ!佐和先生とジュリエッタ先生の実力は学院の中でもかなりの強者!!ほら!楓君も見ただろ??」 興奮気味に結界師が俺に語って来た。 何が変だ…。 八岐大蛇の仲間がこんな簡単に拘束されるのか? 佐和先生の腕を静かに意図も簡単に斬り落とした。 ゴフッ!! 隣を見ると結界師が血を吐いていた。 「お、おい!?!だいじょ…。」 背中を見ると大嶽丸の刀が何本も背中に刺さっていた。 パリーンッ!!! そして結界が解いてしまった。 俺は結界師の脈を確認した。 駄目だ…。 死んでる。 「フフフッ。」 「何?笑って…。」 カタン。 玉藻前が持っていた扇子が地面に落ち、ジュリエッタ先生の肩が斬られていた。 「妾が捕まる訳ないだろう?」 そう言って鞭を斬り刻み自分の尻尾に座った。 ボトボトと血が流れ落ちていた。 「ジュリエッタ!!」 佐和先生がジュリエッタ先生に近付こうとした。 「落雷矢。」 弓の構えをした大嶽丸が雷の矢を佐和先生に放った。 バチバチ!!! 「ウガ!!」 佐和先生の体に雷の矢が刺さり感電して気を失ってしまった。 「さてっと。片付いた事だし御子柴楓を殺しますか。」 大嶽丸が刀を構えこちらに向かって来た。 二人はかなりの血を流している早くこの結界を解かないと死ぬかもしれねぇな…。 俺は札を飛行機の形に折り佐和先生とジュリエッタ先生の元に飛ばした。 「医療術"折り紙"。」 俺を守ってくれたこの人達を死なせる訳にはいかねぇ。 俺は持っていた刀で腕を斬った。 「何だアイツ?自分の腕を斬ったぞ?」 「下がれ大嶽丸。」 「ん?何だよ急に…?」 「この静かな空気…。来るぞ。」 玉藻前は俺を見て勘づいた様子だ。 俺は赤札に血を染み込ませ目を閉じた。 「式神血晶"明鏡月香(めいきょうげっこう)"。」 床から水が現れ水の上には沢山の花が浮いていて、空間に大きな蓮の花が現れた。 花が開き現れたのは月詠だった。 「お主等か。妾の大事な子を殺そうとする者達は。」 月詠はゆっくりと手を挙げた。 「明鏡月香。」 そう言うと玉藻前と大嶽丸の体を蓮の鶴が巻き付き水の中に引き摺り込んだ。 花のお香の香りと蓮の花の香りが混じり合う。 二人は苦しそうにもがいていた。 やった…。 「これで終わった…。」 「楓!!」 「え?」 グサッ!! 背中に痛みが走った。 自分の体を見ると刀が刺さっていた。 月詠がこっちに来ようとしていた。 「君には少し眠って貰おうか。」 知らない男の声がした。 月詠が赤札の姿に戻りヒラヒラと舞い落ちた。 「ゴホッゴホッ。」 「あっぶなー。」 玉藻前と大嶽丸は苦しそうに水から上がって来た。 式神血晶を解かれた!? どうやって解いた? 「さっさと殺すぞ。」 大嶽丸が俺の前に凄い速さで現れ刀を振り翳した。 殺される!! 俺は目を強く瞑った。 キンッ!! 誰かが刀を止めた。 俺は目を開けた。 そこに居たのは黒い帽子に黒いスーツ、白い髪の毛と髭のお爺さんが立っていた。 「ホッホー。間に合って良かった。大丈夫か小僧。」 「あ、アンタは一体?」 「ぬらりひょん!?何でアンタがコイツを助ける?」 「あるお方の命でな?」 ぬらりひょんが俺を助けた? ある方の命? 動き始めた妖怪同士の破裂と抗争の蠢く中。 忠義を尽くしたぬらりひょんは一体誰の命で来たのか。 命令を貰い忠義を尽くしたもう一人の妖怪が現れる。 「待っていろー。直ぐに行く。」   第三幕   完
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