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「どうです、親分。うまくいきそうですか」
屋敷の外に一台の車が止まっている。そのなかでふたりの人間が話しあっていた。
「ああ、二回とも夢にうなされて目を覚ました」
親分と呼ばれた男が返事をする。車には大型の機械が積まれていた。特殊な電波を出すことにより、ひとの夢を自由にコントロールできるすぐれものだ。
「本当に強盗の夢を見たのでしょうね」
「ああ、この機械は優秀だ。それに盗聴器でも確認した。金庫の場所も開けかたも自ら示してくれた。これで屋敷に堂々と侵入しても、やつは夢だと思うだろう。ばれるのを気にせず、安心して強盗に入れるというものだ」
「それは楽しみだ。おれたちが去ったあと、夢でなく現実だとわかったら、あの富豪がどんな顔をするか。想像しただけで楽しくなる」
ふたりの強盗は明日の晩に備えて車を発進させた。
そのころ、布団をかぶっていた富豪はまだ寝つけずにいた。夢のなかでやられっぱなしだったことへの、いら立ちが収まらない。ふらふらとベッドを抜けだし、コレクションである拳銃を取りに行く。
「この拳銃を枕もとに置いておこう。そうすれば夢のなかにもあらわれるはずだ」
うっとりした目つきで銃を見つめる。
「今度強盗があらわれたら迷わず撃ち殺してやる。どうせ夢なのだ。気にすることはない」
〈了〉
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