死を拾う男

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 まあ、こんな業界でも、入ってくる奴の理由は他と変わんねえよ。  俺の場合は、気付いたらこの仕事に就いてたのかな。  この業界な、新人はまず、例の受付から入ることが多い。こんなご時世だから、金は要るけど仕事にあぶれちまった奴なんて人種年齢問わず山ほどいるだろ。  で、流れやリスクや仕事を覚えたら、それをやりたいと思う奴だけが、実際にお客を仕事に就く。  誰がそんなことやりてえんだって思ったなら、あんたはまあ、どっちかって言うと俺の好きなタイプだよ。  意外とな、金を貰えるなら、でもってお客が望むならって、そっちの道を選ぶ奴は一定数いる。  そこが一番稼ぎはいいし、中には人殺しに罪悪感を覚えないどころか、それを度胸だと思ってる奴もいるからな。受付やドブ掃除を、バカにする奴もいる。  俺がこの仕事に就いたのは、俺の面倒を見てくれた人が、この仕事をしてたからだよ。  俺がガキの頃は日本はまだ全然マシな国だったけど、それでもメシもろくに食えない子供がいたからな。  そういうところに俺はいて、とにかく人並みの暮らしをしたくて悪足掻きしてた先で会ったのが、その人だったってだけの話だ。  それにな、ドブ掃除は確かにドブ掃除だけど、一番楽な仕事だって見方もある。  受付は本当に殺す必要があるのかわからない奴までお客として仕入れなきゃいけないし、やる奴も当然そこは同じだよな。  やっぱりそれをどうしてもできない奴もいるし、金の為にって一時は頑張れても、そのうちに擦り切れて参ってくる奴もいる。  実はうちで後片付けしてる奴らな、俺以外は全員元本番担当なんだよ。それ聞くと、何となくどういう雰囲気のところかわかるだろ。  ごく稀にだが、面白い話に出会わないわけでもない。結局、最後にお客の人生を見れるのはここだからな。  ごくごく稀に、受付と本番がしくじった仕事の後片付けを上手くやって、遺族とか結局死ななかったお客に感謝されたこともあるしな。  これ、誰にも感謝されないし尊敬されない仕事だろ? たまにありがとうって誰かに言ってもらえると、実は嬉しいもんなんだなって、俺は思ったことがあったよ。
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