死を拾う男

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 2040年の今、日本には、人を殺す仕事がある。  あんたが知ってるか知らないが、俺の仕事は、その後片付けをすることだ。  殺すって言っても、死ぬ気のない奴を暗殺したりするわけじゃない。  俺たちが殺すのは、殺してくれと自分で頼んできた奴だ。  想像つくと思うが、大体のお客は、病人と老人と人生が嫌になった奴だ。  日本じゃ未だに安楽死は合法化されてないし、ここ20年くらいでめちゃくちゃ貧乏人が増えただろう?  持ってたもんを失くすと人は絶望するし、持ってたとしても世の中がつまらないと、敢えてしがみつく意味もわからなくなるのかもな。  まあ、理由は問わない。  結局これも商売だし、本人が納得してて金を払うなら、俺たちはどんなお客でも片付けに行く。  ああ、だが例外もあるな。死亡保険に入ってるお客の仕事だけは絶対受けちゃまずい。  顧客が死んで困る奴がいる場合も受けないことがある。  なんでかって?  簡単だ。  そいつを殺すと、保険屋やら警察やらが厄介だからな。  昔は保険金目当ての偽装殺害依頼が絶えず舞い込んでたらしいが、当然、金を払いたくない保険屋は嗅ぎ回る。  お役所は相変わらず文句言う奴さえいなきゃ目をつぶってくれるが、騒ぐ奴がいれば腰を上げなきゃならない。  でも時々、あるっちゃあるけどな、まずい仕事も。  うちも商売だから、受けて大丈夫な仕事かどうか、受付担当の奴は確認して判断しなきゃなんないんだが、結局後始末するのは自分じゃねえし金は欲しいしで、時々まずい仕事まで受けちまう奴がいるんだよ。  俺は片付け担当だからな、仕事を受ける奴のも奴のも、最後にまとめてると仕事ぶりが嫌でも見えるよ。面倒があると困るのは俺だからな。  なんでそんなつまんないドブ掃除みたいな仕事をしてんのかって?  あんた、面白いこと聞くな。確かにな、どうしてだろうな。
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