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ー半年前ー
取引先の急な依頼内容の変更から、会社に数日間泊まり込みでPCにかじりついて仕事をこなしていた。
溜まった疲労がピークに達し、この日は徹夜明けで始発の電車に乗り込んだ。
電車の揺れが、ゆりかごのように心地よく眠りに誘う。眠らないようにとコーヒーを買ってカフェインを摂取するけど、そんな事は無意味で…いつの間にか眠ってしまった。
「………い……お……おい……おいっ起きろっ!!」
「っ!!!!?」
耳元で聞こえた男性の声が自分に向けられたものだと気付いて目を覚ますと、俺は知らない男性の肩に頭を乗せていた。
「……す、すみません…」
頭がまだボォ~とする中、状況を把握しようと周りを見渡す。…良かった、降りる駅は通過してないみたいだ。
始発の下り線だからか、周りには人がほとんど居なかった。なのに、何故男性は俺の隣に座っているんだろう…?空いてる席なんてたくさんあるのに…。
「いやいや、『すみません』じゃねーから…見ろよこれ」
「……え?……………あっ!!!!」
指差した所を見ると、俺が持っていたコーヒーは男性の太もも付近に全てこぼれていた。一気に血の気が引く…
「すっ、すみませんっ!!すみませんっ!!」
席を立って男性の前で頭を下げる。
「どうしてくれんだよ…コーヒーとか、シミになるだろ」
「本当にすみませんっ!!」
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