『熱のせいだ』

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『熱のせいだ』

それから、あいつからの呼び出しの連絡が1度もないまま1ヶ月が過ぎようとしていた頃、俺は珍しく風邪を引いていた。 「ゲホゲホッ…あぁ…しんどくなってきた」 「何だよ渡部、風邪か?」 「あぁ…久しぶりに引いたみたい…ゲホゲホッ」 出会い方が最悪だったから、いつまで経ってもあいつを受け入れる事が出来なかった。でも、今は、あいつが病気や怪我をおって連絡を寄越せないんじゃないか…と心配ばかりしている。 何度も何度も電話しようとしたけど、最後の通話ボタンがなかなか押せない…。自分の意思に反して受け入れているという事実を認めるには、まだ抵抗があるみたいだ。 「今日は帰っても良いぞ?そんな忙しい訳じゃないし」 「良いの?なら、帰らせてもらおうかな…」 「そうしろ!土日で休んでしっかり治してこいよ」 「ゲホゲホッ…あぁ、分かった。ありがとう」 からだの節々が痛んで寒気がする。今日は熱が上がるだろうから、帰りに薬局に寄って薬とかいろいろ買った。 気を張っていると体調が悪いのに行動出来てしまうけど、家に着いて安心した瞬間ドッと一気に具合いが悪くなる。 両親は県外だから頼る人がいない。 とりあえず、冷却シートを貼って薬を飲んでベッドの近くにスポーツドリンクを置いておけば何とか今夜はしのげる…だろう。 頭まで布団をかぶっても寒気がする… 関節が痛い… ……こういう時…あいつが…居てくれたら……
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