『熱のせいだ』

3/6
前へ
/101ページ
次へ
呼び止めても反応はない。さっきよりも速いスピードで距離がひらいていく…。 『頼むから、止まってくれよっ!!行かないで…』 こんなのズルイだろ…お前の事なんか好きになりたくなかった。あんな酷い奴、関わりたくなかった。 認めたくないのに、こうやってお前は無理やり認めさせようとする。 『そうだよっ!お前の事、好きだよ…だから、戻ってこいよっ!!』 頼むから… 「み……き……ずき……瑞樹……大丈夫か?」 「………………ん…」 俺を呼ぶ声が聞こえて目を覚ますと、全身汗でびっしょり濡れていた。呼吸は乱れ、ぼぉ~とする意識の中、あいつの顔が見えた気がした。 「…………ぁ、つし……」 「ぇ……お前…今、俺の名前………」 お 「……………喉…渇いた…」 「……え?あ、あぁ…ほら、ゆっくり飲めよ…」 あいつが優しく俺を抱きかかえて、口移しでスポーツドリンクを飲ませてくれた。もっと…もっと欲しい… 「お、おい……そんな、舌絡めんな…」 久しぶりのあいつの匂い…落ち着く… でも、あいつが俺の家に居るなんてありえない… 夢か現実か分からないまま、俺はまた眠りについた。
/101ページ

最初のコメントを投稿しよう!

155人が本棚に入れています
本棚に追加