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目を開けると、部屋は暗いままだった。
私はベッドの中にいた。昨日の服のまま寝入っていたようだ。いつベッドに入ったのか、まったく記憶になかった。
ゆうべの、夢か現実かわからない晴介のことを思い、手を握り合わせた。夢にしては感触がリアルだった。
彼はいま、この世界のどこかにいる。
起き上がり、重たいカーテンを開けると光がいっぱいに差し、私は目を細めた。太陽がずいぶん高い位置まできているのがわかった。
テーブルには一人分の使い終えた食器と、ビール缶が二本残っていた。
よく眠れたのか、体は軽い。
シャワーを浴び、皿を洗った。フライパンと鍋、ザルがきちんと水切りカゴに入っていて、私は笑った。
そのとき、メッセージが入った音がした。画面に晴介の友人の名前が見えた。
晴介が事故に遭った。意識はないけど、会いに来てやってほしい。
私はすぐに着替え、部屋を出た。
鍵をかけるのももどかしく、階段を駆け降りる。少し震えていた。
晴介に会いにいく。
だからまた、ここへ帰ってきて。
マンションの扉を押すと、なまぬるい風が全身に強く吹き、私の足をとどめた。
力いっぱい押し戻し、踏み出す。
外の世界は、白く、白く、まばゆかった。
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