活動記録2:波乱の校外活動 完了報告

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 拝殿の前に倒れていた女の子と隅田さんを起こし、私たちは隅田さんと撮影スタジオに戻った。  女の子は、千川先生が彼女の自宅まで送っていくことになった。ちなみに、千川先生は車で来ていた。どうりで到着が早かったはずだ。  二人は記憶があやふやな状態で、どうしてここにいるのかわからないようだった。  ただ、彼女はネット記事を見て、おまじないをしようとこの神社に来たことは覚えていた。でも、おまじないは結局やらなかったのだという。 『ここ、なんだか不気味で暗くて怖かったんです。だから、すぐに家に帰ろうと思って……。でも、家に帰る途中でなんだかめまいというか、フラフラしてきちゃって……』  彼女が神社に来た時、ここはすでに悪霊たちであふれかえっていた。悪霊たちは彼女という器を見つけ、まんまと彼女を乗っ取ってしまったのだ。  これはもう、運が悪かったとしか言いようがない。  そして、隅田さんはというと……。 『ここへ来る前に、あの神社の前を通ったんです。そうしたら、あの女の子があそこから出てくるのが見えて……。その時に目が合って、彼女がひどく驚いた顔をしたので、どうしてなのか気になっていたんです。でも急いでいたので、そのままスタジオへ向かい、撮影が始まってからはそんなことはすっかり忘れていました。でも電話がかかってきて……なんの表示も出ないので変だとは思ったんですが……なぜか、そこからはよく覚えていません』  隅田さんに電話をしたのは、おそらく彼女を乗っ取っていた悪霊たちだろう。  そして、これは後から千川先生に聞いたのだけれど、彼女が両想いになりたいと思っていた人と、隅田さんの顔がよく似ていたらしい。  悪霊たちは彼女の想いを利用し、隅田さんをおびき寄せた。そこで隅田さんをどうするつもりだったのかは定かではないけれど……。何かされる前に間に合って、本当によかった。  彼女も巻き込まれ事故だったけれど、隅田さんは巻き込まれの巻き込まれだ。さらに不運としか言いようがない。  でも──。 「運が悪かったですね。でも、怪我もなく無事でなによりでした」  イッセイ先輩がそう言って隅田さんを労っていると、スタジオで待っていたトモとタクが、声を揃えて言った。 「隅田さんの運の悪さは、筋金入りだから」  え……? 「とにかく運というか、タイミングが悪いことにかけちゃ、隅田さんの右に出るものはいない」 「ほんと、そうだよね。電車に乗れば必ず遅延、車で移動する時も信号をスムーズに通過できたことないし」 「だよな~。身に覚えがないのに、変な女の人に追いかけられたこともあったっけ。あれ、ストーカー? 危うく警察沙汰になるとこだったし」 「お祓いしてもらったこともあるけど、全然効かないんだよね……」  隅田さんはすっかりしょげてしまった。  トモとタクは、そんな隅田さんを今度は持ち上げようと、いろいろフォローし始める。  中学生になぐさめられている大人という図に、私たちは苦笑するしかない。でも、二人が隅田さんを慕っていることはよくわかった。  あ、違うな。ケイゴ先輩も途中からそれに加わっていたので、三人だ。『コネクト』のメンバーは、みんな隅田さんが好きなのだ。 「この度はご迷惑をおかけしてすみませんでした。本当にありがとうございました」  私たちのような中学生にも、きちんと頭を下げてくれる隅田さん。それに……信じてくれるんだな、と思った。  悪霊たちの存在や、私たち、ソウサク部の活動のことを。  ケイゴ先輩がいるからというのもあるとは思うけれど、それでも、普通の大人はなかなか信じてはくれないだろう。中学生が霊、それも悪霊と対峙しているなんて。 「隅田さんってさ、努力家なんだよ。不運ばかりで気の毒なんだけど、それにめげずに努力してるんだ。電車は遅延、車は渋滞や信号に捕まる、だから、待ち合わせの数時間前に家を出るとかさ」 「数時間前ですか?」  ケイゴ先輩の言葉に、私は目を丸くする。 「そう。あらゆるトラブルを想定して動いてるんだよ。俺たちはそんな隅田さんの努力を見てるし、俺たちのために一生懸命やってくれているのがわかっているから、マネージャーとしての隅田さんを信頼して、全部任せてる」  不運だからとなげくのではなく、それを受け入れ、様々なことを見越して行動する。  なんて前向きなんだろう。  諦めてなげくのは簡単だ。でも、隅田さんはそれに向き合っている。 「運、よくなるといいですね」 「そうだな。だけど、隅田さん自身はさほど思ってないよ、自分が運が悪いなんて。……そういう人なんだ」  そうか。物は考えようだ。  運が悪いなんて思わなければ、それをなげくことなんてない。  隅田さんって、すごいな。物事を前向きにとらえて、自分にできる精一杯の努力ができる人なんだ。だから、『コネクト』のみんなに信頼されている。 「……私も頑張らなきゃ」  風の力を自由に操れるようになること。  そのためには、もっとハヤテを信用しなきゃいけないし、信用してもらわなきゃいけない。  シズカ先輩にしていたように、髪にくちばしをちょんと当てて、甘えてもらいたい! 私なんて、思い切りつつかれたことしかないし。 「とんだ一日になったけど、無事に解決できてよかったよ。それじゃ、帰ろうか」 「はい!」  この言葉がきっかけとなり、私たちは撮影スタジオを後にする。  イッセイ先輩の言うとおり、とんだ一日になってしまった。  でも、私は憧れの『コネクト』に会えたし、トモとも少し会話しちゃったし、とにかく大興奮で大満足の、記念すべき日となった。  校外で活動するなんて思ってもみなかったけれど、終わりよければすべてよし!
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