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「リノちゃん、頬がゆるみっぱなしね」
「うふふふ~」
「リノ、トモ推しやめない? 俺にしとけよ」
「兄ちゃん、しつこい」
「僕もレンに同意。ケイゴがいくら口説いても無理だと思う」
「無理って言うなっ!」
ソウサク部全員で、ワイワイと騒ぎながらの帰り道。
笑顔のみんなを見渡しながら、私の顔はますますゆるんでしまう。
憧れのアイドルに会えたことはもちろんだけれど、それ以上に、私はみんなとこうやって一緒にいることが嬉しいし、楽しい。
私が今、こうやってここにいられるのも、風の力……ハヤテのおかげなんだよね。
「ありがとう、ハヤテ」
みんなには聞こえないくらいの小さな声で、私はそっとささやく。
『礼などいらない。私はお前の守護者なのだから』
「!」
私はキョロキョロを見回す。みんなが不思議そうな顔をしている。どうやら、今の声は私にしか聞こえていないらしい。
「どうしたの? リノちゃん」
「えっと……何でもないです」
「あーっ! なんだよ、それ! 俺たちの仲だろ?」
「兄ちゃん、うるさい」
「ケイゴ、あまりしつこいと嫌われるぞ」
「なんだよ、さっきから! リノ! レンとイッセイがいじめるっ!」
「ケイゴ先輩、それはいじめじゃありません。事実です」
「リノまでいじめるっ!」
声をあげて笑いながら、私はドキドキする胸を押さえる。
ハヤテが返事をしてくれた!
私たちがお互いに信頼しあえるのは、まだもう少し先なのかもしれないけれど、それでも。
「一緒に頑張ろうね、ハヤテ」
私だって、ソウサク部の一員なのだ。これからもみんなと一緒に活動していくために、一歩ずつ前に進んでいこう。
「私、みんなに置いていかれないように頑張ります!」
私は、みんなに向かって決意表明をする。
みんなはきょとんとした顔をしていたけれど、ちゃんと言っておきたかったのだ。
ニコニコと満面の笑みを浮かべる私に、ケイゴ先輩がポン、と私の頭をなでた。
「俺たちが、リノを置いていくわけないだろ」
ポン。イッセイ先輩の手が頭に乗る。
「期待してるよ」
ポン。レン君が少し背伸びをして、先の二人と同じように頭をなでる。
「空回りしないように頑張って」
そして、最後はシズカ先輩が、ぎゅ。
「私は、ずっとリノちゃんと一緒にいるから大丈夫よ」
「あーー! シズカだけずりぃぞ!」
「はいはい、ケイゴはもっと離れて。隙あらば口説こうとするんだから。シッシッ!」
「シッシッ」
「ケイゴ、こりないやつ……」
またもや、私を囲んでみんなが大騒ぎする。
みんな優しくて、楽しくて、誰よりも頼りになる「仲間」。
大好きな人たちに囲まれる幸せを噛みしめながら、私はもう一度、内に向かってつぶやいた。
「ありがとう、ハヤテ。あなたがいてくれて、本当によかった」
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