思慕

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「出張で2日拘束してるんだ。出社はしなくいいと言ったのに。」 今しがた戻って来たばかりだと言う石原と和田を、青島は労う。 「そう言われても、平日の昼から家に帰るのは気が引けて。女性陣はちゃんと帰ったと思いますよ。駅で別れましたが。」 石原がそう言うと、青島は頷いた。 「ありがとうございます。出張の報告は予定通り明日の朝でいいですか?それとも報告して、早めに上がりますか?」 青島が石原と和田の顔を見ながら聞くと、石原が答えた。 「社長の予定が大丈夫なら、せっかくだし今から時間貰っていいですか?そうすれば明日は朝から動ける。」 石原がそう言って、和田も隣で頷いている。 「それなら会議室に移動しようか。」 そう言いながら、青島は3人分のコーヒーを作り始めた。 「社長は、向こうに行かれたことあるんですか?」 コーヒーカップを用意しながら、和田が尋ねた。 「いや。工場移設はこの会社を立ち上げた後だったからな。俺はこっちの支社しか知らない。」 それぞれコーヒーを手に会議室に入ると、思い思いに座る。 「しかし環境も施設も素晴らしかった。食事も最高だったし。悪かったですね、俺らが未来ちゃんと行くことになっちゃって。」 ハッハッハ、と豪快に笑う石原に、青島は思わずむせる。 「ちょっと石原さん。変なこと言わないで下さい。仕事なんですから、そんなこと関係ないですよ。」 この場に未来がいなくて良かった、と内心思いながら、心にもないことを言う。 「そうですか。さすが、社長は余裕がありますね。だから未来ちゃんも昔の仲間と、同窓会なんて出来るんだな。」 にこにこと楽しそうに話す石原とは反対に、以前のストーカー紛いの一件で、怒りに震える青島を目の当たりにしていた和田は、ヒヤヒヤしていた。 青島は二人に気が付かれないように息を整えると、さりげなく会話を続けた。 「同窓会は盛り上がっていましたか?」 「どうなんでしょうね。レストランの横にあるバーに行っちゃいましたから、そこまでは見ていません。」 バー?あいつは他の男の前で、酒を飲んだのか。 あれ程言ってるのに、しかも二人きりで。 「でも朝は時間通りに、みんなで朝食を食べましたよ。しっかり食べていたから、早々に切り上げたんじゃないですかね。」 和田が落ち着かない様子でフォローする様子に、青島は笑顔を見せた。 「そろそろ仕事の話をしましょうか。今日はノー残業デーなので。」 相変わらず石原は涼しい顔をしていたが、和田はそれを通り越して、悪寒が走ったような気がした。
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