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思慕
青島の目覚めは最悪だった。
明らかに寝不足で、気持ちも落ち着かない。
昨夜、シャワーを浴びてから携帯を確認すると、未来から、着信の後にメッセージが届いていた。
『お疲れ様です。
同窓会は無事終わりました。
部屋に戻るので折り返しは
しないで下さいね。
おやすみなさい。』
涼子と同じ部屋というのは承知していたし、23時を過ぎていたこともあって、言われた通り電話はかけなかった。
『明日は仕事が終わったら家に行く。
おやすみ。』
と返信した青島は、待ってます、と返ってきたメッセージさえ愛おしく思えた。
それから寝ては目を覚ましを繰り返して、朝になってしまったというわけだ。
動かない体に、少しの間、目を閉じるつもりが、眠ってしまっていたらしい。
慌てて起き上がると、急いで支度を始めた。
「おはようございます。昨日、早かったと思えば、今朝はのんびりなんですね。」
麻里子が含み笑いを浮かべるのを、適当にあしらって社長室に入る。
「コーヒー持って行った方が良いですか?」
と明穂が聞くと、麻里子は首を振った。
「それはみんな各自のタイミングだから、気にしないで。特に社長はそういうの嫌うから。」
僅かに目を見開いた明穂は、囁くように言った。
「それは、駄目ですね。」
明穂が何か言ったような気がしたが、麻里子は気にも留めなかった。
パソコンが立ち上がる間、携帯を確認すると未来からメッセージが届いていた。
『おはようございます。
すごくいい朝です。
朝食も美味しいですよ。
宏さんも楽しみに
していて下さい。』
思わず頬が緩んでしまい、慌てて表情を引き締める。
全く人の気も知らず、呑気なもんだ。
今日はノー残業デーだからと言い聞かせて、仕事に取り掛かった。
すると少し張り切り過ぎたのか、1日が終わった充実感で一息つくと、まだ13時前で唖然とした。
「遅い。」
と時間の流れに悪態をついてから、コーヒーでも入れようかと思い、社長室から出た。
すると派遣社員の明穂が、ひとり座っているのが見えた。
名前…と一瞬考えてから、声を掛ける。
「お疲れ様。松本さん、お昼は?」
青島の声に明穂は、ハッとしたように振り返った。
「青島社長。今日は山本さんが健診でお休みなので、神田さんと時間をずらしてお昼に出ることになっているんです。」
「そうか。」
と短い返事をした青島に、明穂は思い切って話し掛ける。
「青島社長は、お昼どうされるんですか?私、いつも山本さんに連れて行って貰ってて、この辺り、まだ不慣れなので、良ければご一緒しませんか?」
突然の誘いに、一度は断ろうとした青島だったが、朝から何も食べていなかったのと、誰か一緒だと気も紛れるかと思い、出掛けることにした。
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