72人が本棚に入れています
本棚に追加
「また明日ね、チハル! 絶対同窓会来いよ~!」
「はいはい、いいからちゃんと前見て歩きな、ナツミ! アキラ、ちゃんと送り届けてよね~!」
ベロベロに酔っぱらったナツミを背負うようにして、やはり酔っぱらったアキラが私に手を振る。
二人に負けないくらい酔っぱらった私も帰路につく。
その途中で見上げたのは神社の鳥居。
三日月の細い光に照らされた神聖で静寂な場所に自然と足が向く。
あの日、ユキエが昇って行った階段を12年後の私が辿る。
50段ほどの階段をようやく昇りきったあと、神社の裏の笹薮の獣道に踏み込む。
酔っぱらっていなければ怖くて歩けるはずがない。
誰もおらず静まり返った暗闇の中、スマホの光を頼りに目指したのはあの井戸だった。
井戸は一見ポッカリと口を開けているように見えた。
けれど近寄ってみれば鉄網がのっていた。
ユキエがいなくなり井戸の存在を知った誰かが転落防止のために蓋をしたのだろうが。
その簡易的な蓋は残念ながら女子大生の私でも軽々と開けられた。
最初のコメントを投稿しよう!