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「同窓会?」
母から電話があったのは、夏休みに入る少し前のこと。
『そうなのよ、あんたにも知らせて欲しいってナツミちゃんがね』
ナツミは幼馴染み、今も地元にいる友達だ。
連絡先をお互い知らないわけではなかったけれど、上京した後は帰省した時に一度会ったきり。
母は今日ナツミと地元のスーパーでバッタリと出会って、その話を聞いたらしい。
夏の暑い時にあの盆地に帰郷するのか、と思ったら憂鬱が増した。
だけど。
『ほら、ユキエちゃんがいなくなってから今年で12年でしょ? 一応13回忌という形をとるみたいなのよ、高木さんのお家。それに合わせて同窓会を開くことになったって』
ユキエ……、高木ユキエ、ぼんやりと浮かんでくるあの子の笑顔を振りきるように首を横に振る。
『あんたとナツミちゃん、それにアキラくんに会いたいって言ってたって。ユキエちゃんのお母さんがね。仲良かったから、あんたたち』
仲良かった?
違う、違うよ、あの日はたまたま……。
同窓会の話を聞いてしまったら、ますます気が重くなる。
「お母さん、私ね」
今年も友達と旅行に、そう言いかけた私に。
『それにね、家も建て替えるでしょ? お兄ちゃんたちと二世帯住宅にするから。あんたの部屋のもの全部捨ててもいいんだけど、取っておいて欲しいものもあるでしょ? そういうのも整理してほしいし』
「……、わかった。帰るよ」
帰りたくない、帰りたくなんかなかったけど。
同窓会の日程に合わせて二泊三日で帰省することが決まった。
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