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「ただいまあ」
鍵なんかかかっていないのは田舎あるあるだとしてもだ。
夏になり網戸になっている玄関は更に危険、都会では見かけない光景だ。
これでまだ家の中に誰かがいればいいのだが、大きな音を立ててトランクを中に引き入れても人の気配を感じない。
父は仕事だろうし、母はきっと裏の畑か、もしくはご近所の家で井戸端会議という名のお茶をしているか。
2年半ぶりに娘が帰って来る日を忘れてるんじゃないだろうか。
ひとまずトランクを玄関に置いたままでキッチンに行き、冷蔵庫から冷えた麦茶をコップに注ぐ。
2杯一気に飲み終えてようやく生き返った気分だ。
トランクを持ち上げて二階の自分の部屋に辿り着いたら、そこはもう灼熱地獄。
私が帰って来るからと気を使ってくれていたのか、窓は開けっぱなし。
残念ながら熱風しか入ってこない状態に、窓を閉めてエアコンを20度、最大風力でオン。
10分ほど経ってようやく汗がひいてくる温度に変わった。
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