秘密

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 記憶の中の押し入れはガランとしていた、はずだった。  だがしかし、押し入れの上段は布団で埋まっている。  きっとお兄ちゃん家族が泊りに来た時用かもしれない。  下の段に詰め込まれたのは私が聞いていた古いCDの入った段ボールや、あの頃の雑誌。  一冊の古いアルバムを持ち上げたら中に、挟まっていただけの一枚の写真がハラリと落ちた。 「っ、やだ」  子供が4人並んだ写真、端っこに写る白いワンピースを着た女の子の顔がマジックで塗りつぶされていた。  得体の知れない気味の悪さに、悲鳴をあげかけて。  こうして塗りつぶしたのは自分だということを思い出した。  一番左に写っているのは自分、その横にアキラ、それからナツミ、そして……。  ユキエだ、黒く塗りつぶされているのはユキエなのだ。    ユキエの笑顔が怖かった。  だから私は、その顔を真っ黒に塗りつぶしてしまったんだ。  恐る恐るその頃のアルバムをめくったら、同じように塗りつぶされている写真の数々。  それは全部ユキエの笑顔なのだ。  うすら寒くなってアルバムをバタンと閉じて、また押し入れの整理を続ける。  雑貨類を無理やりに押し込めた箱を空ける手が止まる。  中にあるものが何かを知っていたからだ。  恐る恐る開けた瞬間に、机の上に置いていたスマホが音を立てた。
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